A君は暗記をするときに、覚えたいことを書いた紙を食べるようにしています。
A君はその方法を友だちに勧めるので、周りから白い目で見られています。
そこで家庭教師のY先生は、その勉強法をやめるように言います。
「いいかい、Aくん、紙を食べても… 紙を食べても内容を覚えることはできないんだ。
毎回それで覚えていたと思っているのは、紙に書いているときに記憶が定着したからだと思う。
書いて食べるというインパクトのある行為が、記憶の定着に有利に働いていたという可能性はあるかもしれない。
しかしもっと良い方法があると思うんだ。
忘却曲線という言葉を聞いたことがあるかい?
今日は紙を食べなくても覚えられる方法を練習してみよう」
善意ほど怖いものはない
自分が良くなった方法を、誰かに伝えたくなるという気持ちは誰にでもあると思います。
しかし改善したことと、実践した内容にどの程度の因果関係があるか証明できるでしょうか?
例えば私が『命の水を作るTMTスーパー天然塩ベルト』という商品を使っていた頃に蕁麻疹が治ったとしましょう。
価格は300万円です。
おそらくこの商品と蕁麻疹の改善には関係がありません。
他の人がこの商品を使っても蕁麻疹は治らないでしょう。
それなのに、その商品で治ったと思い込んでいる人は他人に勧めてしまいます。
善意の人が、300万円のインチキ商品を勧めてしまうのが思い込みの恐ろしさです。
口コミの恐ろしさ
『治った方法』とされる商品を売れば、一定数の人から自然と感謝の声が集まります。
商品と何ら関係が無くても、勝手に治る場合があるからです。
たまたま治る時期にその商品を使っていたに過ぎません。
騙されたと思った人は、騙されたことが恥ずかしいので、わざわざネットに書きたくない場合が多いです。
一方、その商品で治ったと思っている人は有頂天になっているので、良い商品だと宣伝し始めます。
再現性という視点
科学では再現性が重要視されます。
再現性とは実験や調査で得られた結果が、他の人や別の場所、別の時にも同じように出ることを保証する性質のことを言います。
例えば糖質を摂取すると血糖値が上がります。
血糖値が上がる量に個人差はありますが、これは誰でも共通の栄養摂取における性質です。
だから、低血糖であれば糖質を摂取すると、身体の機能を保ちやすくなると推測ができます。
そこで糖尿病で急な低血糖が起きたときは、グルコレスキューなどのブドウ糖を摂取するという方法が確立されています。
ある人は低血糖のときにブドウ糖を摂った方が良くて、別の人は塩を舐めた方が調子が良くなるということはありません。
これが再現性です。
口コミには再現性が期待できない
SNSには、目を覆いたくなるような健康法や健康関連商品が溢れています。
それに対してポジティブな口コミがされていることも目にします。
しかしこれはただの経験談であり再現性の保証はありません。
一方、有機科学、生化学、解剖学などの知識には再現性があります。
だから健康になりたいのなら、口コミを頼りにするのではなく、教科書的な勉強を大切にして欲しいのです。
SNSを信じる怖さ
SNSで毎日やり取りをいている仲の良い人が勧めている商品は、自分も使いたくなるかもしれません。
憧れのインフルエンサーが紹介しているサービスなら受けたくなるかもしれません。
しかし自分にそれが必要かどうかは、教科書的な知識でも判断しましょう。
直感が全てだと間違える確率が上がります。
「教えてくれた方法で治らなかった」そんな逆恨みをしても、誰も助けてくれません。
自分が選択した際に十分な調査をしたのか振り返ってみてください。
教科書勉強をすればする程、失敗する確率は下がり、妥当な判断が下しやすくなります。
SNSには悪意の有る無しに関わらず、さまざまな情報が入り乱れています。
1つの情報の真偽を確かめるのも、相当な時間と手間がかかります。
せめて自分が取り入れたい方法や、購入する商品のことは、徹底的にリサーチしましょう。
きっと更に良い方法が見つかるはずです。