あなたは何年前の情報で栄養療法をしていますか?
未だに胃酸補助に塩酸ベタインという投稿をしている分子栄養学の関係者がいます。
更新されない古い情報で栄養療法をすると、そうなります。
胃酸が出ていないから胃酸を補助するために塩酸ベタインを飲む。一見理に適った方法に思えます。
しかし見落としがあるかもしれません。それを考えていきましょう。
胃酸の補助にはなる
確かに胃酸が出ない場合に、塩酸ベタインは胃酸の補助になります。
ここで胃の機能とたんぱく質の消化の仕組みについて復習しておきましょう。
健常者の胃の中のPH(酸とアルカリの程度)は、通常の空腹時は1.5~3程度という数値になります。
酸とアルカリの程度を示すPHは0~14で表されて、数字が小さいほど酸性の度合いが強くなります。
そして胃の中のPHが2以下になると、たんぱく質の消化ができる状態になります。
胃の中では塩酸が分泌されており、PHが低い状態を保っています。
そして食べものを見たり匂いを嗅いだり、胃が食べた刺激を受けるとペプシノーゲンが分泌されます。
そしてペプシノーゲンがPH2になると、たんぱく質を分解する機能のあるペプシンに変わります。
まずはここまでを抑えましょう。
胃壁から胃酸が出る仕組み
次に自前の胃酸が出るための知識が必要です。
分子栄養学では、ペプシノーゲンがペプシンに変わる話は出てくるのですが、なぜか自分の胃酸を出す話が出てきません。
胃では食べ物が入ると1.5~3程度だったPHが4以上に中和されます。
食べ物自体が中性の7前後のものが多いので、胃の中の酸性と中和されるのです。
PH4以上になると胃壁からガストリンが分泌されます。
そしてガストリンが分泌された刺激で胃酸が分泌されます。
ここで勘の良い人なら気がつくはずです。
少し食べてから塩酸ベタインを飲むという方法だと、胃の中のPHが4以下になり自前の胃酸が出せなくなるのです。
分子栄養学の界隈では、食前に飲むと胃が荒れやすいから、何かを少し食べてから塩酸ベタインを飲むという方法が推奨されることが多いです。
でもそれだと、せっかく消化が進もうとしているのに、自前の胃酸が止まってたんぱく質の消化がしにくくなったり、胃酸による殺菌ができなくてSIBOになりやすいということです。
良かれと思ってやってる行為が逆効果
誤った情報や、更新されていない古い情報を元に栄養療法をすると、お金も健康も失うということです。
少し脱線したので戻します。
アシドーシスに塩酸は禁忌
先程チラッと希塩酸の画像を紹介しました。
あれは塩酸ベタインと同じ目的で使用される医薬品の塩酸です。
塩酸ベタインのリスクを知るために、希塩酸コザカイMの添付文書を見てみましょう。
禁忌の欄にアシドーシスのある患者と書かれています。
アシドーシスは血液が酸性になる状態です。
体内のPHが至適な状態でないと、酵素の働きが弱まって正常な機能を保てなくなります。
だからアシドーシスになると、胃酸を出して酸と塩基の平衡を保とうとして吐き気が起きます。
低血糖の人が気持ち悪くなる原因の1つはアシドーシスだと考えられます。
低血糖になると糖でエネルギーを作れないので、脂肪をエネルギーにしようとします。そのときにケトン体が産生されます。
ケトン体は酸性なので、血液が酸性になりアシドーシスになります。
気持ち悪くなったときに吐くと楽になる原因の1つは、酸を身体の外に出したためです。
では、こんなパターンを想像してみてください。
副腎疲労疲弊期の人の朝。
コルチゾールが出せないので低血糖が起きている。
脂質を燃やしてエネルギーを作ろとうして、ケトン体が産生される。
そこでアシドーシスが起きて吐き気がする。
でもその仕組みを知らずに、自分は胃が弱いから朝に吐き気がしていると思い込んでいる。
SNSで見かけた塩酸ベタインの解説を見て、「これだ!」と思って飲み続ける。
しかし吐き気は一向に良くならず、むしろ悪化している。
「理屈は合っているので、継続していれば治るんだ!」
自分にそう言い聞かせて、今日も塩酸ベタインを飲み続ける。
こんな悲しい状況になっている人がたくさんいます。
私のサロンでもこの情報を知った人が衝撃を受けていました。
副腎疲労の人が低血糖でアシドーシスになるのは、お決まりのパターンなのです。
そして消化力が弱くなるのも定番です。
だからアシドーシスなのに塩酸ベタインを飲んでしまっている人がたくさんいるのです。
塩酸ベタインを飲んでいる人の多くが、希塩酸の注意書きと同じくアシドーシスを進行させているのかもしれません。
胃に炎症がある人も避けた方が良い
塩酸ベタインは強い酸なので胃に刺激があります。
だから空腹時に飲むと刺激を感じる人がいるのです。
通常であれば胃粘液が分泌されて保護されるはずなのですが、体力が低下している人はその機能が失われていることが多いように感じます。
そのような状況で健康な人と同じように胃の中のPHを下げてしまったら、食事中に塩酸ベタインを飲んでも胃に問題が発生しやすいと考えられます。
また、胃にピロリ菌が居ても炎症が起きます。
GI-MAP検査という、日本国内の標準治療の検査では発見できない僅かなピロリ菌も検出できる検査があります。
普通の病院で検査してもピロリ菌が見つからなかったのに、GI-MAP検査をしたら見つかったという症例がたくさんあります。
私のサロンでも同様の報告を頂いていて、除菌後に素晴らしく体調が改善したという声を頂いています。
胃のPHが上がっている原因がピロリ菌なのに、塩酸ベタインを飲み続けるというのは間違った対応です。
ピロリ菌がいるなら、まずは標準治療の保険適用で検査を行い、それでも原因がわからなかったらGI-MAPの検査を行います。
いつか良くなると信じてピロリ菌を放置して塩酸ベタインを飲み続けても、体調は改善しません。
では、胃酸が出ていなくてたんぱく質の消化が苦手な人は何をしたら良いのか考えてみましょう。
食事より分子量の小さいたんぱく質
ここで先日お送りした、平均分子量のブログが活きてきます。
通常の食事から得られるたんぱく質は分子量が大きく、消化に負担がかかります。
しかし分子量が小さく加工してあるプロテインやペプチドの製品であれば、どんな人でも難なく吸収できます。
消化という作業がいらないからです。
塩酸ベタインで無理矢理消化力を高めて分子量の大きいたんぱく質を摂取しようとしなくても、食事のたんぱく質の割合いを減らして、平均分子量の小さい製品を使えば良いのです。
分子栄養学では塩酸ベタインを勧めて、通常の使用量ではほとんど足しにならないたんぱく質の量しか摂取できない出汁パウダーが勧められることがあります。
ハッキリ言って、やってることが滅茶苦茶です。
そんな方法で体調が良くなるはずがありません。
まだの方は絶対に読んでください▼
まとめ
塩酸ベタイン自体が危険だとは思わないでください。
希塩酸が必要性のある医薬品であるのと同じく、塩酸ベタインにも意味があります。
胃酸が出ていないので塩酸ベタインや希塩酸での補助が必要という人も中にはいると思います。
しかしそれは限定的です。消化力が弱い全ての人に当てはあるわけではありません。
自前の胃酸には期待ができないから、それを止めてでも補助がしたいという限定的な状況でのみ必要とされるのが塩酸ベタインです。
しかも以下の条件においては、使用が推奨されません。
①自前の胃酸の分泌が必要な人
②アシドーシスの人
③胃炎がある人
④ピロリ感染がある人
⑤平均分子量が小さいたんぱく質の製品が手元にある人
希塩酸を処方するのは医師にしかできません。
患者にアシドーシスが無いかなど、検査をして確認するから処方出来るのです。
しかしサプリには規制が無いので、分子栄養学カウンセラーは無責任にリスクのあるサプリを紹介します。
医師は医師免許を取得して臨床経験があるから的確な処方ができます。
しかし30万円程度の講座を受けただけの自称分子栄養学カウンセラーにはそれができません。
リスクなど何も知らなくても、自分のことをカウンセラーだと思い、危険な提案をクライアントやフォロワーにしてしまうのです。
SNSを見ると嘘や間違った情報を流している分子栄養学の関係者がたくさん居て、それ参考にしている人たちを見る度に暗い気持ちになります。
しかし彼らは高額な講座の内容を信じ切っており、その内容の受け売りをしているので罪の意識がありません。
間違った情報を学んだらその通りに顧客に提供するし、適切な情報でも理解力が足りなくて間違った情報を伝える伝言ゲームをしてしまいます。
だから自分で勉強をする必要があります。
分子栄養学には今回の塩酸ベタイン以外にも、たくさんの危険な情報が溢れています。
それらのリスクに気がつくために、1つ1つの分子栄養学の情報を検証していくのは途方もない作業です。
でも、それが必要だと思うから私はやっています。
あなたもお金と健康を守るために、情報の検証を続けてください。
自力では難しいと思ったら、こちらでお手伝いができます▼
真面目な先輩たちと一緒に勉強をしましょう。
このブログに対して素敵なコメントを頂けました。
この方と同じように、間違った情報により体調を崩してしまった人もいるのではないでしょうか?
そしてそれに対して疑問を呈したら黙殺されたという経験もあるかもしれません。
そのような悲しい思いをしませんでしたか?
高額な講座でも実態は宗教と変わらないのかもしれません。
だから自分で調べて納得のいく栄養療法をして欲しいのです。
それが自立した栄養療法です。