このブログは、架空の健康食品である、『キラキラZ』の効果として公開されている、エビデンス(根拠)について解説しています。
これを読むと、健康食品に良い根拠があると言われても、そのまま信じずに、冷静に判断することができるようになるかもしれません。
まずは、「キラキラZ」という特定の飲料を摂取した際に、30日で示された腸内細菌の変化に基づいた実験結果の画像をご覧ください。
実験結果の解説
画像に示された実験結果から、特定の飲料「キラキラZ」を摂取することによって腸内フローラが顕著に変化したことがわかります。具体的には、ビフィズス菌が増加し、悪玉菌とその他の菌の割合が減少しています。この結果から以下の初期的な知見を得ることができます:
- 腸内環境の改善
- ビフィズス菌が増加することで、腸内環境が改善される可能性があります。ビフィズス菌は、腸内で有害物質の生成を抑制し、便通を良好にするなどの役割を果たすことが知られています。
- 健康効果の可能性
- ビフィズス菌の増加は、便秘解消や免疫力向上など、一般的な健康状態の改善に寄与する可能性があります。また、腸内環境が改善されることで、全身の健康にも良い影響を与えると考えられます。
エビデンスレベルと実験手法の不備
この実験のエビデンスレベルを評価する上での不備としては、研究の設計に関する詳細(ランダム化、盲検化の有無、サンプルサイズ、統計的分析方法など)が不明であることが挙げられます。これらの情報が提供されていないため、得られた結果の信頼性や一般化の可能性に疑問が残ります。
そして、これをそのまま「エビデンスがある」として宣伝してしまうと、一般の消費者が、以下のような期待をしてしまうおそれがあります。
架空の一般の消費者が期待する効果
- 40代専業主婦Aさん
- Aさんは日常の忙しさからくるストレスや食生活の乱れが気になっています。ビフィズス菌が増えることで腸内環境が改善され、便秘が解消される効果や、全体的な体調が良くなることを期待しています。また、肌の調子が良くなることも望んでいるかもしれません。
- 50代会社員Bさん
- 中年期に入り、健康への意識が高まっているBさんは、病気予防やエネルギーレベルの向上に興味があります。ビフィズス菌の増加による免疫力の強化や、慢性的な疲労感の軽減を期待する可能性があります。
- 腸活インフルエンサーCさん
- 腸内フローラと健康についての深い知識を持ち、その情報を広く共有しているCさんは、この飲料の科学的根拠と具体的な健康効果に関心を持つでしょう。Cさんは、ビフィズス菌の増加がどのように具体的な健康改善につながるかをフォロワーに説明し、腸内環境を整える新たな方法として推奨する可能性があります。
しかし、この実験結果には不足している部分があるため、一般の消費者が期待しているような効果が得られないかもしれません。
そこで、先程の画像の研究結果だけでは、エビデンスがあると言えない理由について、考えていきます。
長期的な健康の維持や疾患の予防、体感の向上があるとは言い切れない理由
この実験結果だけでは、長期的な健康の維持や疾患の予防、体感の向上が成されるとは言い切れません。
短期間のデータから長期的な効果を推測するには、以下のような追加的なステップが必要です。
- 長期追跡研究:より長い期間にわたって同じ参加者を追跡し、健康状態の変化を継続的に評価する。
- 多くの個人を対象とした研究:より多くの参加者を含む研究を行い、結果の一般化可能性を高める。
- 異なる人口統計学的特性を持つ個人の研究:年齢、性別、基礎疾患の有無など、異なる特性を持つ個人群を含めることで、効果の範囲を広げる。
まずは、このような理由から、先程の画像のデータを、そのまま信じたり、宣伝に使うことができないのです。
よりエビデンスレベルを高くするための実験手法
以下のような実験手法を取り入れると、エビデンスレベルが高くなり、信頼できる研究と、言えるようになってくると考えられます。
まずは画像の実験結果では強いエビデンスがあるとは言えない理由について考えていきます。
キラキラZのエビデンスレベルが、現段階では高いと言えない理由
- サンプルサイズの明記不足: 研究に参加した人数が少ない場合、結果の信頼性が低下します。
- 研究期間の短さ: 30日という短期間では、長期的な効果や副作用を評価することが困難です。
- コントロール群の欠如: 対照群がなければ、得られた結果が飲料の摂取によるものか他の要因によるものかを区別することができません。
- 二重盲検法の不使用: 研究者と参加者の両方がどのグループに属しているかを知らない状態で実験を行うことが、バイアスを最小限に抑えるためには重要です。
そして次に、エビデンスレベルを高めるための実験手法を確認していきます。
より高いエビデンスレベルにするための実験手法
- ランダム化コントロール試験(RCT)の実施: 参加者をランダムに実験群と対照群に割り当て、飲料の摂取が健康に及ぼす影響を科学的に評価します。
- 盲検化の導入: 参加者と研究者のどちらも、誰が実験群か対照群かを知らない状態で研究を行うことで、主観的なバイアスを排除します。
- サンプルサイズの増加: より多くの参加者を含むことで、結果の一般化可能性と統計的な力を向上させます。
- 追跡期間の延長: 長期間にわたって参加者を追跡し、健康効果の持続性や副作用を評価します。
この実験結果を見た一般消費者に対する注意喚起
一般消費者である我々は「キラキラZ」のような健康食品に対して、以下のような注意を払う必要があります。
- 過剰な期待を避ける:
- 初期の研究結果がポジティブであっても、それがすべての人にとって同じ効果をもたらすとは限りません。個人の体質や健康状態によって効果が異なる場合があります。
- 長期的な研究結果の欠如:
- 短期間の研究では、長期的な効果や副作用は明らかになりません。長期間にわたる健康への影響を把握するためには、更なる研究が必要です。
- 科学的根拠の確認:
- 製品を利用する前に、その科学的根拠や研究方法を確認することが大切です。信頼できる情報源からの詳細なデータや専門家の意見を参考にすることが推奨されます。
- 専門家との相談:
- 特に既存の健康問題を抱えている場合や、特定の治療を受けている場合は、キラキラZの摂取を開始する前に医師や栄養士と相談することが望ましいです。
- 広告と宣伝に惑わされない:
- 製品の宣伝や広告は、しばしば最良の結果のみを強調し、可能性のあるリスクや限界を省略することがあります。消費者は批判的な視点を持って情報を評価する必要があります。
結論
このように、単に実験したというだけでは、根拠があると言うには不十分ということが、わかって頂けたと思います。
根拠があると証明するには、一定のレベルの実験手法が必要であり、それによって認められた場合に、「根拠がある」と言えるのです。
しかし、予算や人員などの関係で、大規模な実験を行える企業ばかりではありません。良い製品を販売している企業の中には、製品開発には予算をかけられても、その効果を実証するための大規模な研究までは、行えない場合もあります。
石橋を叩いても渡らないという選択をしていると、健康食品から得られるメリットを享受できないリスクも存在するということです。
我々一般消費者は、エビデンスを確認することは、もちろん大事ですが、エビデンス依存にならないようにすることも、同時に大事なことだと思います。
他人が証明したエビデンス以外にも、自分が商品を選ぶ際に、判断の基準となる指針が持てると、より良い選択ができるようになるかもしれません。