肝臓がんのリスクをわかって鉄剤を飲んでますか?
藤川理論をしている人に特徴的な血液検査の数値というものがあります。
『中性脂肪が低く、ALT、ASTが異常に高い』 どうして肝臓に関わる酵素の数値が高くなるのかを、今から説明します。
命を大事にしたい人は見て。
今回の記事の前提
まず、前提として異常な量のB群の摂取についての話は除外します。
NOWのB50に限った話ではないのですが、ビタミンB自体が肝臓で代謝されるので、大量に摂れば肝臓の負担になります。
そのため、藤川理論で推奨される量のビタミンBを飲むと、肝臓の数値が上がる場合が多いです。
しかし今回は鉄の話です。
B群の過剰摂取でもALTとASTが上がる可能性がありますが、その話は別のものと考えてください。
NAFLDとは
アルコールの摂取が無いにも関わらず、肝臓に脂肪が過度に蓄積する疾患を指します。
NAFLDは日本ではナッフルディーと読みます。
以下の頭文字から、非アルコール性脂肪性肝疾患をNAFLDと言います。
non:非 alcoholic: アルコール性 fatty: 脂肪性 liver: 肝臓 disease: 疾患
進行すると、以下の通りに悪化するとされています。
非アルコール性脂肪肝の慢性化
↓
肝硬変(肝臓の線維化)
↓
肝がん
今から鉄の過剰とNAFLDの関係についてお話します。
クッパー細胞に蓄積した鉄
肝臓に存在するクッパー細胞に鉄の過剰な蓄積があると、肝臓の線維化が起きることがわかっています。
Kanamori Y, Tanaka M, Itoh M, Ochi K, Ito A, Hidaka I, Sakaida I, Ogawa Y, Suganami T. Iron-rich Kupffer cells exhibit phenotypic changes during the development of liver fibrosis in NASH. iScience. 2021 Jan 5;24(2):102032. doi: 10.1016/j.isci.2020.102032. PMID: 33521599; PMCID: PMC7820131.
ヘムとして、たんぱく質と結合できなかった遊離の鉄は、肝臓に蓄積します。
ヒトの身体は鉄を豊富に摂取することを想定していないので、積極的に排泄する手段を持ちません。
ヘムを合成するのはエネルギー産生に関わるTCA回路なので、低エネルギーの人に対して、過剰な鉄剤を飲ますのは、肝臓にリスクがあると考えられます。
鉄の吸収
通常は体内での鉄の吸収量は厳密に管理されており、余計に飲んでも便として排出されやすくなっています。
体内が炎症していると、活性酸素を作りすぎないために、鉄の吸収を制限する機能が腸には備わっています。
鉄は活性酸素の発生源なので、使い切れない分は取り込みたくないのです。
しかし異常な量を摂取してしまったり、藤川理論で推奨されるキレート鉄だと、必要以上に身体に吸収されてしまいます。
このため、藤川理論を実践する人の肝臓の数値は高くなるのだと考えられます。
ALTとAST
ALTとASTは肝臓に多く存在する酵素です。
肝臓の細胞が活性酸素で破壊されると、漏れ出るのがALTとASTです。
肝臓から漏れ出ると血液中を流れるので、ALTやASTの数値が上がると、肝臓の異常を想像します。
ASTは筋肉にも多く存在するので、筋トレの後などにも上がる可能性があります。
また、筋肉を分解して糖を作る、糖新生が行われてもASTが上がる可能性があるので、低血糖だとASTの数値が上がる可能性があります。
しかしALTは特に肝臓に多いので、ALTの数値が30を超えるなどしたら、注意が必要です。
ただし、たんぱく質やビタミンB6の不足があると、ALTの数値は低下するので、自分は25だから安心とは思わないでください。
本来は、他の項目とも総合的に見ていく必要があります。
ALT、AST共に20程度、運動をしていたらAST30程度が目安ですが、その数値なら大丈夫ということではないということです。
鉄剤の使用について
鉄剤の使用を検討するには、現在の鉄の摂取量の把握が必要になります。
食事から十分に鉄を摂れているのに、サプリを足してしまうと、過剰摂取になってしまう可能性があります。
摂取量の目安は日本人の食事摂取基準に記載があります。
15~69歳で、月経有りの女性の推奨量が10.5mg/日とされています。
また、40mg/日が耐用上限量なので、藤川理論で推奨される鉄の量は、本当に危険です。
もし鉄剤の使用を検討するなら、食事から不足した分をサプリで補うか、医師の判断により、リスクを把握した上で、ある程度の量の摂取をするべきです。
いくら藤川理論の本に書いてあったとしても、耐用上限量を超える量のサプリ、個人の判断で摂取すべきではありません。
必要なのは食材からの鉄の摂取量の把握
どんぶり勘定で多めに鉄を摂取するのが危険だということはわかりました。
そこで、食材からの鉄の摂取量を把握していく必要があります。
10.5mg必要な人が、毎日5mgで過ごしたら貧血になるのは当然です。
その人に必要なのが、サプリで5.5mg足すことなのか、10.5mgの献立を考えて作る能力なのかは、個々の状態によります。
ただし、食材からの量を把握しようとしないで、サプリで解決するのは危険です。
食事から摂取できる方法を覚える訓練を積まないと、一生サプリを使わないといけないし、過剰摂取のリスクも上がります。
食材からどれくらいの量の栄養素を摂取できているか把握するという訓練を、ほとんどの人が嫌がります。
でも、健康になりたいと言います。
そんなに虫の良い話はありません。
完全にグッタリしていて、頭が回らないので、一時的に鉄のサプリのお世話になるのは良いと思います。
でも、ある程度元気になったら自分が作った献立の栄養価を把握できるようになって欲しいです。
面倒くさがってそれをやらないと、ずっと栄養療法ジプシーを続けることになります。
藤川理論が危ないから目を覚まして、実践講座を受けました。
それでも良くならないから、今度はPUFAフリーをしてます。
次は心理とキネシオロジーを始めました。
こんな迷走を続けて居ないでしょうか?
ザックリでも良いので、1日の鉄の量が5mgなのか、10mgなのか、わかる能力が身についていたら、こんなに散財しないで済んだかもしれません。
世の中には、もっともらしい理論を述べている人たちが、たくさんります。
自分が治らないのは、まだ見ぬ画期的な知識に巡り会えていないからだと思っている内は、ずっと栄養療法ジプシーが続きます。
教科書的な当たり前の勉強をしましょう。
その部分の精度を上げるだけで、大半の人の問題は解決します。
貧血の問題はもっと複雑ですが、まずは食事からの鉄の摂取量の把握という、基本を抑える必要があります。
目新しいセミナーにお金を落として安心しないで、今日の朝ごはんの食材の重量を測って、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年から、鉄の重量を測ってみましょう。
面倒くさい作業ですが、これを繰り返すことでしか、栄養素の摂取量を把握することができません。
大きな結果を出すのに近道はありません。
面倒くさい作業を繰り返してください。