ひろみは一時期、体調が非常に悪く、何度も医者を受診していたが、一向に改善される気配はなかった。
彼女は慢性的な疲れと頭痛、それに不眠に悩まされていた。
その原因は分からないまま、日常生活にも支障をきたしていた。
ある日、彼女はSNS上で「自然治癒の力で完治する方法」についての投稿を見つける。
それは特定のサプリメントと、高額なセミナー、そして厳格な食事制限を組み合わせたものだった。
ひろみは、その投稿者の前後の写真や、数多くの成功体験を見て心を奪われ、自分も「目覚めた」と宣言する。
彼女はまず、推奨されるサプリメントをまとめ買いし、さらにセミナーに参加するための費用を捻出するため、貯金を取り崩し、クレジットカードでの借金を重ねた。
そして、自分だけでなく、子供にも同じ食事制限とサプリメント摂取を始めさせた。
配偶者の和也や、学校での友人たちからは、子供の急激な体調変化に心配の声が上がっていた。
子供は元気をなくし、学校の成績も急降下。
体も細くなっていった。
ひろみは子供の変化を「浄化反応」と決めつけ、さらに厳格な健康法を押し付け続けた。
和也は何度もひろみに説得を試みるが、彼女は「自分と子供が本当に健康になるため」という思いが強く、和也の言葉を受け入れることができなかった。
ある日、ひろみは倒れてしまい、緊急入院することとなる。
そして翌日、子供も体調を崩し、病院に運ばれる事態となった。
医師からは、ひろみと子供の体は栄養失調と過労で極限まで追い詰められていたと告げられる。
この事件をきっかけに、ひろみは「目覚めた」と思っていた健康法の誤りを痛感し、家族との絆の大切さを改めて認識する。
彼女は和也や子供たちに深く謝罪し、家族は再び結束を深めていく。
経済的な傷跡は深かったが、この経験を通じて家族は、信じることの大切さと同時に、盲目的に何かにのめり込む危険性について学ぶこととなった。
LAS湘南代表
政安秀仁
終
制作・著作
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