私の嫌いな言葉の一つに『ヘルシー』というものがあります。
日本語に訳すと『健康的』という意味です。
この世に健康的な食品というのは存在するのでしょうか?
9割以上の人が間違う答えがこちらです
ヘルシーな食品には、次のようなものが挙げられると思います。
- ビタミンやミネラル、抗酸化成分などの含有量や種類が多い食品(いわゆるスーパーフードなどと呼ばれる食品)
- ブロッコリースプラウトのスルフォラファンなど、他では摂取しにくい希少な成分が含まれる食品
- 農薬や有害金属などの汚染が少ないもの
- 養殖よりは天然の魚(大型魚よりは小型魚)
- 有機栽培や自然農法の野菜、果物
- こんにゃくや海藻など、低カロリーなもの
健康とは?
先程のような食品で健康になるのであれば、健康とは何かを考えなければなりません。
健康のイメージとして、次のようなものが挙げられると思います。
- 病気や怪我が無い ・精神的に問題が無い ・極端な痩せ、肥満ではない
- 長寿かつ、自立した状態である
- 目的に合致した身体機能を有する
- 目標を達成する機能を有する身体である
また、世界保健機関(WHO)は、「健康」を以下のように定義しています。
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。
世界保健機関(WHO)憲章とは|公益社団法人 日本WHO協会
単に心身の機能が望ましい状態というだけではなく、どこで誰と過ごすかという、社会的な要素も健康の定義に含まれます。
ようするに、健康という概念自体が、幅広い意味を持っているということです。
幅広い意味を持っているということは、その状態になるための手段は目的により異なるということです。
たくさんの健康
目的が異なれば、手段が異なります。
以下のように、その人の望む状態が異なれば、求める健康な食材や成分は異なります。
関節痛の人 | N-アセチルグルコサミン |
今夜どうしても寝ないで仕上げたい仕事がある人 | カフェイン |
半年後の大会で筋肉の出力をアップさせたいウェイトリフティングの選手 | クレアチン |
また、ある人にとって健康に寄与する成分が、別の人には問題を起こす場合もあります。
前者はその食材や成分で有益な結果が得られる可能性のある人。
後者は問題を起こす可能性のある人です。
食材や成分 | 有益な結果が得られる可能性のある人 | 問題を起こす可能性のある人 |
---|---|---|
バター (アラキドン酸) | 低カロリーで少食な人 | 炎症が多い人 |
うまみ調味料 (グルタミン酸) | リーキーガットの人 | グルタミン酸代謝酵素が不十分な人 |
カニ、エビ (甲殻類のたんぱく質) | たんぱく質が欠乏している人 | 甲殻類アレルギーの人 |
このように、全ての食材は、その人のその時の状態によって望ましい結果を生むかどうかが変わります。
お金がかかり過ぎるのも不健康
ネットの噂に毒されて、
- 無農薬が良い
- 科学的なものは極力さけたい
そう思っている人が、有機農法や自然農法の食材だけを揃えようとしたら、毎月の食品が大変なことになるはずです。
化学物質過敏症で該当する物質が野菜に付着している場合や、極端に解毒機能が低下している人なら、それでも良いのですが、有機野菜などを求めている人の大半が、栄養価計算などの本当に必要なことをしないための、免罪符として健康的なイメージの食品を求めているように感じます。
毎月の生活費が20万円の人が、普通に生活すれば食費を3万円で済ませられるところ、9万円かかっているとしたら、それは不健康です。
生活を圧迫してしまい、必要な物品を購入できなくなります。
栄養の基本的な勉強にお金を使い、選択を誤らないようにした方が、健康でいられると思います。
知識に誤りがあると時間やお金を無駄にしてしまいます。
お金が無くなった結果、不安になりコルチゾールやノルアドレナリンを出していたのでは、健康とは言えません。
間違った選択をすると、経済的にも不健康になります。
ヘルシーという言葉を使う人
国家資格の管理栄養士が、「この食材はヘルシーなので、積極的に食べましょう」と発言をすることは、無いと思います。
仮に発言したとしても、一般の人にわかりやすく伝えるために、苦渋の決断で発した言葉だと思います。
栄養と健康について少しでもまともに考えたことがある人なら、ヘルシーという言葉は使いません。
世の中には、いろいろな状態の人がいます。
それぞれの人にとって必要なものは異なるので、「この食材がヘルシー」とは言えないのです。
だからヘルシーという言葉を使っている人は、イメージで物事を語り、現実が見えていない人ということです。
これに当てはまる人は一生不健康です
- 明確な根拠が無いのに、自然食品の店に行く人
- 数値的な根拠が無いのにスーパーフードを好む人
- 普通のスーパーの食材で作った栄養価計算された献立より、無農薬の野菜で作った献立の方が健康に良いと思っている人
世の中には健康的なイメージの食品がたくさんあります。
でも、それを食べれば、どんな人でも望む状態になれるというような、魔法の食材はありません。
自分が今、どのような状態だから、どんな種類の栄養素を、どの位の量を摂るかという選択と組み合わせがあるだけです。
それを実現させるための栄養価計算は、知識と手間が必要です。
健康的なイメージの食材を買ってくるだけなら、知識も手間もいりません。
本来必要な労力をかけずに、お金をかけただけで救われると思っているなら、宗教と一緒です。
お守りを買うことで安心してしまう信者
宗教ではお守りが売られています。
お守りを買うことで安心してしまい、必要な対策を講じることを疎かにしてしまえば、却って危険なのです。
- 寝不足の運転手がトラックに貼る『交通安全』のお守り
- 喫煙をやめない妊婦が持ち歩く『安産祈願』のお守り
- 赤字なのにやり方を変えない経営者が事務所に置く『商売繁盛』のお守り
この人たちを客観的に見たら、おかしいと思うでしょう。
「お守りを買うより先に、もっとやるべきことがあるんじゃない?」
そう言いたくなると思います。
それと同じツッコミを入れたくなるのが、『ヘルシー』や『健康的』という言葉を使う人達です。
「有機野菜を買うより、カロリー計算が先じゃない?」
「大型魚を避けるより、魚を食べる頻度と量を気にするべきじゃない?」
「遺伝子検査してないのに、モリンガ入りのプロテインに入っている合成葉酸は摂っちゃうの?」
見ていて疑問に思う選択をしている人たちだらけです。
妥当な選択をし続けていると思える人は、ほとんど目にしたことがありません。
「自分はまともだ」と自分に言い聞かせながら、見当違いの選択をし続けているのです。
まずしてほしいこと
健康になりたいなら、これだけはしましょう。
- 管理栄養士が教えるような、カロリー計算、PFCの計算
- 標準治療の受診
毎日1,000kcalで生活しているなら、ポテトチップスとコーラは健康食品かもしれません。
副腎疲労だとカウンセラーに言われて病院に行かなかったら、実は副腎の腫瘍で治療が遅れたかもしれません。
栄養価計算や標準治療を侮っていると、こういったリスクがあります。
まずは普通のことをして、それから分子栄養学のように、もっと先進的な概念を学んでほしいのです。
必要な努力をしないまま救われようとして、邪教の教徒になってしまうと、自分も周りも傷つけます。
そうならないために、これから更に健康になるための判断力を身につけるための配信をします。