味の素が毒だと思っている人も、大丈夫だと言い切る料理家も間違っているかもしれません。
SNSの間違った情報で勘違いしている人も多いので、確認しておきましょう。
グルタミン酸ナトリウムの真実。
まず最初に、グルタミン酸というアミノ酸について解説します。
グルタミン酸とは
たんぱく質はアミノ酸の分子がいくつも結合したものです。
そこでたんぱく質が豊富な肉類・魚介類・乳製品にグルタミン酸が豊富に含まれます。
そしてトマト、大豆、小麦などの穀物、昆布などにも含まれます。
このように、グルタミン酸はありふれた物質であるということを知っておいてください。
合成された毒素ではなく、自然界に存在するアミノ酸です。 体内では以下のような働きがあります。
- 興奮系の神経伝達物質として働く
- アンモニアの解毒
- 全身を構成するアミノ酸を合成するための材料
- 免疫機能のサポート
分子栄養学や生化学を学んでいる人は、ASTという酵素をご存知だと思います。
ASTは、アスパラギン酸とアルファ-ケトグルタル酸との間でアミノ基を転移させる酵素です。
この反応により、アスパラギン酸はアルファ-ケト酸に変換され、アルファ-ケトグルタル酸はグルタミン酸に変換されます。
血液検査でASTの数値が低すぎる人は、グルタミン酸の合成がうまくいかずに不足するかもしれません。
グルタミン酸ナトリウムとは
一方、グルタミン酸ナトリウムとは合成されたうま味調味料です。
グルタミン酸というアミノ酸に、ナトリウムを結合させる理由は以下の通りです。
- 料理などに溶けやすくするため
- 味の強く出すため
- 口当たりを良くするため
- 湿気などにより固まるのを防ぐため
SNSではグルタミン酸ナトリウムは毒だから絶対に摂るべきではないと主張する人もいます。
しかし、グルタミン酸ナトリウムは消化管で速やかにグルタミンとナトリウムに分かれます。
化学式で書くと以下の通りになります。
C5H8NO4Na→C5H8NO4‾+NA+
ただのグルタミン酸の陰イオンと、ナトリウムの陽イオンに分かれるだけです。
グルタミン酸ナトリウムにはあって、グルタミン酸には無い毒性などはありません。
あえて言うなら、過剰に使うとナトリウムの過剰摂取で高血圧の心配があるということです。
しかし、現実的には食塩によるナトリウムの摂取量の方が多いと思うので、高血圧の心配なら、そちらを減らすべきでしょう。
では、グルタミン酸やグルタミン酸ナトリウムは、絶対に安全なのでしょうか?
次の章では代謝について学びます。
グルタミン酸の体内での代謝
グルタミン酸はグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)という酵素の働きで鎮静系の神経伝達物質のGABAに変換されます。
しかし酵素の量や活性は遺伝的・栄養的な要因などによって異なります。
血液検査のAST、ALT、γ-GTなどの数値は酵素の量を表しています。
人によってそれらの酵素の数値が異なるように、GADの量や活性も人によって異なると考えられます。
AST、ALT、γ-GTなどが基準値内での低値だと、病名の診断はされなくても日常生活の質が低下するという情報は、分子栄養学を学んでいればご存知だと思います。
例えばγ-GTが低ければ、グルタチオンの代謝が苦手なので解毒機能が正常に働かず、デパートの1階の化粧品売り場の匂いや、柔軟剤の匂いに過剰に反応するとされています。
これらの化学物質の匂いが苦手というだけでは、標準治療のどこの病院も診てくれないと思います。
そういった人の体調を改善するのが分子栄養学の得意とするところです。
GADの話に戻します。
GADも同じく低値であれば、病名は付かなくても、健康上の問題が出やすいと考えられます。
GADが低値だとグルタミン酸をGABAに変換できません。
興奮系のグルタミン酸が溜まって過剰になり、鎮静系のGABAが不足するということです。
なんとなく落ち着かない状態の脳になるのが想像できると思います。
次の章ではグルタミン酸が過剰になったときの毒性について解説します。
グルタミン酸が過剰になった際の神経毒性
グルタミン酸が過剰になると、グルタミン酸受容体が活性化されます。
グルタミン酸受容体が活性化すると、神経細胞内へのカルシウムイオンの過剰な流入を引き起こします。
カルシウムイオンの過剰な蓄積は、細胞内のさまざまな酵素を活性化し、細胞損傷、炎症反応などを引き起こします。
そして神経細胞の損傷または細胞死(アポトーシス)します。
GADを作る遺伝子に変異が無く、酵素を作るための栄養状態も適切な人であれば、通常の料理に使う量のグルタミン酸ナトリウムを摂取しても何も起きないはずです。
しかし、遺伝子に変異があったり、酵素を作るためのたんぱく質の不足などが続いている人であれば、グルタミン酸がGABAがにならずに溜まってしまい、こうした問題を引き起こす可能性があります。
だから味の素を毒だと言って避けるのも、万人にとって絶対に安全だと言い切るのも間違っているのです。
グルタミン酸ナトリウム(うまみ調味料との付き合い方)
ここまでで、以下のことが学べたと思います。
- グルタミン酸や、グルタミン酸ナトリウムの分子的な性質
- それらを代謝した際の流れ
- 個人差によって代謝の問題が起きる可能性があること
この3点を踏まえて、味の素などのうま味調味料との付き合い方を考えます。
うま味調味料はとても便利な商品です。
料理やスナック菓子などに少し使うだけで、味が決まります。
そして昆布などからグルタミン酸を得る方法に比べて、安価です。
更に昆布でグルタミン酸を得ようとすると、どうしてもヨウ素の過剰摂取の問題が発生します。
分子栄養学に興味を持つ人に多い、病名の診断はされないレベルの甲状腺機能低下がある人は、特にヨウ素の過剰摂取に気をつけなければなりません。
診断されるレベルの人ならなおさらです。
ときどき、味の素は危ないから出汁パウダーを使っていますという、トンチンカンなことを言う人がします。
合成イコール危険・天然イコール安全 という思考停止している人の発想です。
合成には不純物を減らせるというメリットがあります。
合成であれば、昆布のヨウ素や、天然の素材に含まれやすい有害金属や汚染物質を含む可能性を減らせます。
逆に天然だと予想もしない物質が混入したり、体質上摂取したくない成分や栄養素まで一緒に摂ってしまう可能性があります。
甲状腺の機能が低下しているなら、出汁パウダーの昆布を避けて、味の素を使うという方法も十分に有効な手段だと思います。
しかしGADの酵素が少なかったり、活性が低い場合は出汁のグルタミン酸もうまみ調味料も極力避けて、別の旨味で調理するのが望ましいです。
GADの酵素を作る遺伝子に変異がある人へ
早産で生まれたり、発達障害の方はGADの酵素に変異がある可能性が高まります。
そうした傾向の人は、脳内のグルタミン酸が過剰になりやすく、GABAが減少しているそうです。
これを予防するのが妊婦の魚の摂取によるオメガ3の補給ということです。
栄養療法をする人の中には、オメガ3を摂取すると生体内核爆発が起きると主張する人がいます。
そうした内容を信じてしまって、早産や発達障害になり、脳の神経細胞を損傷しやすい状態で子供を産んでしまうと親子共に苦労すると思います。
水銀を恐れすぎて魚を摂取しないことも同義です。
適度に食べたり、食べられない日は良質なオメガ3のサプリを摂取しておくのが良いと思います。
サロン会員様は、本日これから行う投稿でこのような場合のオメガ3以外の対策を紹介しておきますので、是非ご覧ください。
恐らくオメガ3が不足して、オメガ6が過剰だと子宮が収縮しやすくなり、アラキドン酸代謝経路により産生される炎症性エイコサノイドが子宮頸管熟化や子宮収縮を誘導して、早産に繋がるのだと思います。
オメガ3が毒だと思っている人は、一度冷静になって論文を探してみてください。 「オメガ3 早産」などで検索すれば、たくさんの情報が見つかるはずです。
まとめ
グルタミン酸ナトリウムのような便利な調味料を毒だと思って避けていると、お金が余計にかかったり、調理の手間が増えて疲れます。
しかし絶対に安全だと言い切って、代謝に問題がある人に食べさせると病院では診てもらえない不調になる可能性もあります。
絶対に避けるべきとか、絶対に安全だとか極論に走らず、代謝の仕組みを考えて上手に付き合っていきましょう。
ある程度の量で実際に具合が悪くなる人はいるようなので、そういう人の体感を否定することのないようにお願いします。
そして陰謀論的な情報に踊らされて、避ける必要な無いのに避けて、誤った判断をして経済的・健康的な損失を被らないようにお気をつけください。
大丈夫な人は大丈夫、ダメな人はダメという、どんな食品や栄養素にも当てはまる、当たり前のお話でした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
あなたのより良い選択のための一助となりましたら幸いです。