先日の藤川理論のツイートで、フェリチンが低いから鉄剤を飲んでますというリプを数件頂いて驚きました。
多くの人が、フェリチンには2種類あることを知らないようです。
9割の人が勘違いしている鉄の真実
フェリチンの数値単独で、鉄の貯蔵の度合いを予想することはできません。
ここで言うフェリチンとは、血清フェリチンのことです。
2種類のフェリチン
フェリチンには2種類あります。
- 血清フェリチン(鉄をほとんど含まない)
- 組織フェリチン(鉄を含む)
血液検査で測るのは、血清フェリチンです。
多くの人が、フェリチンというと鉄の貯蔵を表す数値だと思っています。
そして、血液検査で測るフェリチンに鉄が含まれると勘違いしています。
鉄が含まれるのは、組織フェリチンです。
組織フェリチンの役割
組織フェリチンの役割は、鉄の貯蔵です。
これはイメージ通りですね?
肝臓などに多く存在しています。
だから肝臓にダメージがあると、フェリチンが漏れ出して、血清フェリチンの数値が上がる場合があります。
キレート鉄の過剰摂取で活性酸素が発生して、肝臓にダメージがあり、フェリチンの数値が上昇するのはこの状態です。
分子栄養学を学びたての人や、藤川理論を実践している人は、肝臓のダメージによるフェリチンの上昇を喜んでいたりします。
これは、組織フェリチンと血清フェリチンの違いを理解していないために起きる勘違いです。
血清フェリチンの役割
血清フェリチンは、組織フェリチンが漏れ出したものなので、体内での役割というより、血液検査の数値としての利用価値があります。
肝臓などにフェリチンが十分に存在すると、漏れ出す量が増えるので、血清フェリチンの数値が上昇します。
このため、貯蔵鉄を含む組織フェリチンが十分に存在すると、自然と血清フェリチンも上昇するので、血清フェリチンは間接的に貯蔵鉄の状態を表しているとされています。
間接的というのがポイントです。
肝臓にダメージがあったり、体内で炎症が起きると血清フェリチンの数値は上昇します。
このため、血清フェリチンの数値が高くても、貯蔵鉄が十分に存在することの証明にはなりません。
血清フェリチンの上昇要因
①組織の損傷
肝臓などの組織の損傷により、フェリチンが漏れ出すので、血清フェリチンの数値が上昇します。
②炎症
体内で炎症が起きる状態を、身体は細菌感染の可能性として捉えます。
細菌の繁殖に鉄が使われるので、炎症が起きると、身体は細菌に鉄を横取りされないように、フェリチンの合成を高めます。
カンジダなどの慢性的な感染でも、鉄の横取りが起きると考えられるので、フェリチンの数値が上昇する可能性があります。
また、実際には細菌感染していなくても、アレルギーや自己免疫疾患などでも炎症が起きるので、フェリチンの数値が上昇する可能性があります。
このため、フェリチンの上昇は、鉄の貯蔵だけではなく、炎症のマーカーの判断材料としても用いられます。
また、炎症が起きると、細菌に鉄を横取りされないように、細胞内に鉄を閉じ込めようとする働きも起きるとされています。
こちらの仕組みで、鉄の貯蔵が進み、組織フェリチンが上昇することで、間接的に血清フェリチンの数値が上昇することもあります。
血清フェリチンだけで鉄の摂取を検討しない
血清フェリチンの数値だけで、鉄剤の必要性を判断しないでください。
これまで説明した通り、血清フェリチンは直接的に鉄の貯蔵を反映しません。
感染や炎症で上昇しているだけの可能性があります。
また、過剰な鉄剤の活性酸素で、肝臓の細胞が破壊されて、フェリチンが漏れ出したことにより上昇している可能性もあります。
終わりに
貧血と鉄の対応は難しいです。
身体の仕組みを十分に理解しないと、適切な対応が取れません。
今回紹介したフェリチンの仕組みは、鉄の代謝のお話のごく一部です。
よく勉強して鉄の摂取の仕方を考えないと、対応が逆効果になり、健康を害す可能性があります。