親愛なる若き管理栄養士の皆さん
今日は、私たちの職業の本質と限界について、率直に話をさせていただきます。長年この道を歩んできた者として、皆さんに伝えたいことがあります。
私たちは確かに、栄養学の専門家です。厳しい教育過程と国家試験を経て、この資格を得ました。その知識と経験は、間違いなく価値あるものです。しかし、それは私たちだけが栄養の真理を握っているという意味ではありません。
栄養の世界は、想像以上に広く、深いのです。日々新しい発見がなされ、パラダメムシフトが起こっています。私たちが大学で学んだことが、数年後には覆されることもあるのです。
考えてみてください。私たちが学んだ日本人の食事摂取基準。その全文を完全に理解し、根拠となった全ての研究を熟知している人が、私たちの中に何人いるでしょうか?正直に言えば、ほとんどいないでしょう。
さらに言えば、私たちの多くは、日々の業務に追われ、最新の研究に触れる時間すら持てていません。一方で、管理栄養士の資格を持たない人々の中には、特定の栄養テーマに深く没頭し、私たちよりも専門的な知識を持っている方々もいるのです。
彼らの中には、従来の栄養学では説明できなかった現象に新たな光を当てる人もいます。未知の栄養学の領域を切り開いている人もいるのです。私たちがその声に耳を塞ぐのは、栄養学の発展を妨げることにもなりかねません。
確かに、誤った情報や危険な助言を広める人々もいます。それらを見分け、適切に対処することは私たちの責務です。しかし、それは批判や排除ではなく、対話と協力を通じて行うべきです。
私たちの強みは、広範な栄養知識と、それを個々の状況に適用する能力にあります。しかし、それは常に謙虚に学び続け、他者の知見にも耳を傾ける姿勢があってこそ、真の力となるのです。
管理栄養士の資格は、栄養の専門家としての出発点に過ぎません。真の専門家となるには、生涯にわたる学びと、多様な視点を受け入れる柔軟性が必要なのです。
皆さん、どうか狭い枠に自分を閉じ込めないでください。他分野の専門家、そして時には一般の人々からも、学ぶ姿勢を持ち続けてください。そうすることで、私たちは本当の意味で人々の健康に貢献できる存在となれるのです。
栄養の世界は、まだまだ未知の領域に満ちています。その探求には、多様な視点と協力が不可欠です。私たちの使命は、その協力の中心となり、様々な知見を統合し、人々の健康に還元していくことなのです。
皆さんの中にある、知識への渇望と、人々を助けたいという情熱を、決して失わないでください。しかし同時に、常に謙虚さと開かれた心を持ち続けてください。そうすることで、皆さんは真の意味で、人々の健康と幸福に貢献できる存在となれるでしょう。
この素晴らしい職業の未来は、皆さんの手の中にあります。広い視野と深い洞察力を持って、栄養の世界をさらに豊かなものにしていってください。皆さんの成長と、より良い栄養の世界の創造を、心から応援しています。