管理栄養士の栄養指導で致命的なのが、血液検査を元に各栄養素の摂取量を指導する能力が無い点です。
基準の通りの摂取量を指導することしかできず、実際に栄養素の血中濃度が上がるかまで見ていません。
ある老人ホームのデータですが、74名を対象にビタミンB1の濃度を測ったところ、欠乏状態にある人が全体の56.8%もいたそうです。
管理栄養士が献立を作り提供している老人ホームでも、これだけ不足があるということです。
一般的な健康診断ではビタミンB1をはじめ、ほとんどの栄養素を直接的には図りません。
だから欠乏していることに気が付かないのです。
計算通りの食事を提供して、「それを完食していれば欠乏は起きない」と考えているのがほとんどの管理栄養士のはずです。
分子栄養学の視点
一方、分子栄養学では、各栄養素の欠乏を血液検査で判断します。
血液検査で不足していると判断した栄養素を、食品よりも効率的に摂取できるサプリの形態で摂取し、血中濃度が上がるか確認します。
血液検査で数値が上がるまでサプリを使うというのは、割と簡単な方法なので、管理栄養士の指導でも行えると思います。
しかし、実際にはサプリを使っても血中濃度が上がらない人もいるのが事実です。
- 糖質の摂取量が多すぎてB1の欠乏が解消しない
- 胆汁が少なくて脂溶性ビタミンの値が上昇しない
- 腸内環境が悪くてミネラルの数値が上がらない
などのことが頻繁に起きます。
そこから血中濃度を上げていき、欠乏を解消するという方法が、分子栄養学の本領を発揮する部分です。
これは管理栄養士にはできません。
学校や業務で学んでいないからです。
管理栄養士に不足している視点
管理栄養士は、食事摂取基準を元に栄養指導をしているはずです。
その食事摂取基準は、確実と言える僅かなデータでのみ基準を設けているので、見落としが多々あります。
実際にその通りに栄養指導をしていても、多くの人で欠乏が起きるというのは、血液検査まで見ている人なら知っているはずです。
そこで、「私は基準通りに指導しているのだから、後は知らない。それでも具合が悪いなら、それは医療の領域だから自分には関係ない」と思っている管理栄養士が多いのではないでしょうか?
栄養のプロを自称しながら、自分が学んだ食事摂取基準に落ち度があったら「あとは知りません」というのが、プロの態度でしょうか?
そのくせ、「栄養士・管理栄養士以外は栄養の情報配信をするべきではない」などと挑発的な発現をする人までいます。
確かに私がオカルト栄養と呼ぶような、目を覆いたくなるような栄養の情報を毎日のように目にします。
そういう人には消えてもらいたいと思う気持ちは、私も一緒です。
その情報で、健康被害に合う人を見るのが心苦しいからです。
栄養疫学や摂取基準にばかり固執するのではなく、栄養で人々を健康にしたいという初心を忘れないで頂きたいです。
分子栄養学ならできること
例えば血清亜鉛やALPの数値が上がってこない人がいたときに、どのような指導ができるでしょうか?
ラットの実験では短鎖脂肪酸の量の違いで、亜鉛の吸収が10%ほど異なることがわかっています。
食事中の亜鉛の量を10%増やそうとすると、食事の量まで増やさなくてはなりません。
食事量を増やせば完食する率が下がるので、サプリを使うのが便利ですが、今度は予算の問題が出てきます。
水溶性食物繊維のサプリを汁物に入れるだけで、人でも同じような結果が得られる可能性があります。
また、その人に合ったプロバイオティクスをGI-MPAなどの便検査の結果から調べたり、腸の抗酸化になる物質の摂取や、グルタミンの摂取で腸内環境を改善することも可能です。
こうした方法で、実際に結果が出ている人がいます。
先進的過ぎて統計が集まっていない状況ですが、仕組み的には十分に理解できると思います。
分子栄養学には、管理栄養士が習っていない技法がたくさんあります。
それを知ろうともしないで、怪しいと断ずるのは無知そのものです。
むやみやたらに、たくさんの栄養素を摂取するのが分子栄養学ではありません。
全て生化学・生理学的な仕組みに則って行っています。
進歩するためには認めること
こうした事実が数多くあるにも関わらず、自分達の領域で習っていないということだけで、それらの結果を無視するのでしょうか?
しかし「そんな予算は無い」「個別に指導する余裕なんてない」などという意見もあるかもしれません。
それならそれで良いのです。
「本当はもっと良い方法があるけど、仕事だから仕方なく今の栄養指導しかできていない」
そんな謙虚な気持ちが持てていれば良いのです。
でも実際は、「分子栄養学は怪しい」とか、「栄養士と管理栄養士以外は情報配信するな」などと思っている人もいます。
例え国家資格を有していると言っても、自分たちは栄養のごく僅かな部分しかわかっておらず、知識を増やせばもっと多くの問題を解決できるという事実を知っておいて頂きたいと思います。
給料が安くて嘆いている管理栄養士が多いようですが、周りの人ができない、先進的な栄養指導ができれば、需要が高まり給料が上がるのではないでしょうか?
今から分子栄養学を学んで指導ができるレベルになろうとすると、何年もかかると思います。
実際に、私の目から見て安心できる栄養指導ができている分子栄養学の関係者は、数名しかいません。
ほとんどが、経験不足で栄養指導をしてしまっている状況です。
このように業界として黎明期の状況で、分子栄養学を学ぶのは困難を極めると思います。
「学校を出てテストで合格すれば資格が与えられて仕事が貰える」という甘い業界ではありません。
口が達者で集客は上手いけど、苦情が集まる先生も多いのが分子栄養学の業界です。
そうした人にならず、本当に健康になりたい人の利益になる仕事がしたいなら、今までと比べ物にならない努力が必要だと思います。
栄養で人を健康にするというのは、思っているより大変なことです。
決して今の自分が、その仕事をできていると思わないことです。
教科書ではなく、人を見てください。
今までのあなたが知っている知識では、栄養素の欠乏が起きている人がたくさんいるという事実があります。
それは医療機関を受診しても病名が付かないけど、日常生活の質が下がっている人たちです。
これまでは『体質』と言われて諦めていた人たちが、身体の仕組みを理解した方法で体調を改善することが出来ています。
それが分子栄養学です。
栄養学や栄養疫学、食事摂取基準の実践で健康になれなかった人がいるという事実と、そうした人が分子栄養学で健康になれているという事実を知っておいてください。